看護師や医師がベッドサイドで患者のお腹の状態を把握する際、最初に行われるのが腹部フィジカルアセスメントです。腹部の診察手順には厳格なルールが存在し、一般的な身体診察とは順序が異なります。
原則として腹部診察は「視診 → 聴診 → 打診 → 触診」の順番で進められます。打診や触診を先に行ってしまうと、外部からの物理的刺激によって腸管が刺激され、本来の腸蠕動が人工的に亢進したり反射的に抑制されたりして、正確な状態を評価できなくなるためです。そのため、視診で腹部の膨満や手術痕を確認した直後に、静かに聴診器を当てることが鉄則とされています。
臨床において推奨される腹部聴診 看護手順と具体的な聴取のコツは以下の通りです。
- 患者のポジショニング:腹壁の緊張を緩めるため、仰臥位(仰向け)になり、両膝を軽く曲げてもらいます。腹筋に力が入っていると音が遮蔽されて聞き取りにくくなります。
- 聴診器の温度管理:冷たいチェストピースをいきなり腹部に当てると、驚きや冷刺激で蠕動運動が乱れるため、必ず手のひらで温めてから皮膚に当てます。
- 最適なグル音 聴診部位:腹部を臍(へそ)を中心とした「4分画(右上腹部、左上腹部、右下腹部、左下腹部)」に分けて順次聴取します。中でも最も音が聴取しやすいのは右下腹部(回盲部付近)です。小腸から大腸へと内容物が移行する弁(回盲弁)が存在するため、活発な音が絶え間なく発生します。
- 聴診にかける時間:腸蠕動音は一定の間隔で連続して鳴るわけではありません。正常であれば1つの部位で15〜30秒ほど当てれば確認できますが、音が聞こえにくい場合や異常を疑う場合は、最低でも1分以上、全体として数分間かけて慎重に音の周期と性状を確認します。