京都のすき焼きといえば、三嶋亭やモリタ屋をはじめとする創業100年超の高級肉料理店が全国的に知られています。しかし、そうしたハレの日の贅沢とは異なる文脈で、京都人が日常の延長線上で通い詰めるのがすき焼きキムラです。
暖簾をくぐると、まず目に飛び込んでくるのは使い込まれた木製の下駄箱と木札の鍵。階段を上がって広間に案内されると、畳敷きの広々とした和室に低めの座卓とガスコンロが並びます。昭和初期へタイムスリップしたかのようなノスタルジーに包まれながら、ジュウジュウと肉が焼ける香ばしい匂いが漂う空間こそ、キムラ最大の醍醐味といえます。
「高級食材である牛肉を、庶民に美味しくお腹いっぱい食べてもらいたい」という創業以来の哲学が貫かれており、サービス料や過剰な装飾を削ぎ落とすことで、驚くべき手頃さを維持しています。この気取らない大衆割烹の精神が、舌の肥えた京都の旦那衆から学生、インバウンド旅行者までを虜にしています。