旅のプロや地元関係者が口を揃えて「最大の初歩的ミス」と指摘するのが、尾道駅から最初の島・向島へ渡る際のルート選択です。地図アプリだけを頼りに自転車を漕ぎ出した観光客が、本州と向島を繋ぐ「尾道大橋」や「新尾道大橋」へ迷い込んでしまう事故が頻発しています。
新尾道大橋は自動車専用道路(西瀬戸自動車道)のため軽車両は進入禁止ですが、無料開放されている旧・尾道大橋も歩道幅がわずか1メートル程度しかありません。大型トラックや路線バスがすぐ脇を猛スピードで通過するうえ、路面には段差が多く、突風にあおられれば車道へ転落しかねない極めて危険な構造です。警察や地元自治体、観光協会も「自転車・歩行者の尾道大橋通行は絶対におすすめできない」と公式にアナウンスしています。
正解は、尾道駅前から出ている「尾道 渡船 向島 乗り場」を利用することです。尾道駅を出て徒歩3分ほどの場所にある「駅前渡船(向島運航)」なら、向島までの乗船時間はわずか約3〜5分。運賃も大人100円、自転車10円(合計約110円・取材時点)という破格の金額で、情緒ある尾道水道の船旅を楽しみながら安全にサイクリング推奨ロードの起点へ入ることができます。この渡船の存在を知らずに橋へ迂回し、体力を消耗した挙句に危険な思いをする初心者が毎年後を絶ちません。
もうひとつの決定的な誤算は「橋へのアプローチスロープによる累積標高」の甘い見立てです。しまなみ海道は平坦な海岸線だけを走る道ではありません。巨大な吊橋を渡るたびに、海抜0メートル付近から標高50メートル前後の橋桁まで、傾斜3〜4%の長い専用坂道を登り続ける必要があります。これが6つの橋で繰り返されるため、体力ゲージはじわじわと削られ、中間地点の大三島や伯方島に到達する頃にはペダルを漕ぐ脚が完全に止まってしまうのです。