「先週の健診で2650gと言われたのに、37週の今日測ったら2520gに減っていた。お腹の中で赤ちゃんが縮むことなんてあるのか」——ネット上のマタニティコミュニティで毎週のように投じられる悲鳴である。だが、結論から言えば、母体内で胎児の体重が実際に減少することは重篤な胎盤機能不全による極度の脱水等を除いてほぼあり得ない。
日本国内の産科現場で用いられている妊娠37週のエコー推定体重(EFW)は、実測値ではなく、日本超音波医学会が策定した計算式に基づいた「統計的シミュレーション値」に過ぎない。具体的には、以下の3箇所の数値をミリ単位で計測し、複雑な回帰方程式に代入して算出している。
- BPD(児頭大横径):頭の最も広い左右幅の断面
- AC(躯幹周囲長):お腹の断面の周囲の長さ(内臓の発達度合い)
- FL(大腿骨長):太ももの骨の長さ(骨格の成長度合い)
この計算システムの性質上、37週のエコー誤差は大きい時で±10%前後、グラム数にして250〜350g程度は日常的に生じる。とりわけ37週では、頭部が骨盤の狭い骨盤腔に進入して横から圧迫され、形が円形から前後に細長い楕円形へと変形(応形機能)することが多い。その結果、頭の横幅であるBPDが実際よりも狭く計測され、計算上の推定体重がガクンと跳ね落ちてしまうのだ。これが37週のエコーで体重が減った最大の原因である。
さらに臨床の現場では、担当医師の計測技術やプローブを当てる角度、赤ちゃんの呼吸様運動による腹囲(AC)の数ミリのズレだけで、計算結果が200g単位で即座に変動する。特に、早産児・低出生体重児の境界線とされる臨月の推定体重2500gのラインをわずかに下回った際、パニックに陥る妊婦は多い。しかし、翌週に産まれてみたら2800gを超えていたという事例は枚挙にいとまがない。単一のポイントにおける「減少」や「微増」に一喜一憂するのではなく、これまでの成長曲線全体が上向きのカーブを描いているか否かを確認することが、医学的に極めて重要である。