大甚本店を訪れる初心者が最も戸惑うのが、長年受け継がれてきた独特の注文システムです。一般的な居酒屋のように「とりあえず席でメニュー表を開く」という行動パターンは通用しません。スマートに楽しむための基本手順をステップ順に整理します。
ステップ1:暖簾をくぐり、席の案内を受ける
引き戸を開けると、店員(あるいは帳場の大将)が人数を確認し、空いている席へ案内してくれます。1階は基本的に大きなケヤキの一枚板テーブルを中心とした相席です。案内された席へ腰を下ろしたら、荷物は足元や膝上にコンパクトにまとめます。
ステップ2:まず「飲み物」を口頭で注文する
席に着くと、給仕のスタッフがお酒の注文を聞きに来ます。ここで真っ先に頼むべきは、名物の賀茂鶴 樽酒です。「小徳利(1合)」または「大徳利(2合)」のサイズを選び、飲み方を指定します。大甚の真髄を味わうなら「燗(ぬる燗)」が定石。四角い特製燗どうこで絶妙な温度に湯煎された徳利が、程なくして手元に運ばれます。ビールや焼酎、ソフトドリンクもこのタイミングで注文します。
ステップ3:中央の陳列台へ向かい「小皿料理」をピックアップ
お酒を頼んだら、店内中央のカウンター陳列台へ向かいます。ここには常時30〜40種類に及ぶ日替わりの小皿料理が整然と並べられています。煮豆、ポテトサラダ、わけぎのぬた、バイ貝の煮付け、小魚の南蛮漬けなど、目移りするような惣菜の数々が並びます。食べたい皿を自分で取り、自分の席へと運びます。温かい状態で食べたい煮物や焼き物は、近くの店員に「これ温めてください」と声をかければ、厨房で適温に温め直して席まで届けてくれます。
ステップ4:刺身や焼き魚は口頭で別注
台に並ぶ小皿惣菜とは別に、本日のおすすめ刺身(マグロ、シメサバ、タイなど)や、焼き魚、天ぷらなどの温菜・生ものは壁の短冊メニューや店員への口頭注文でオーダーします。厨房で仕立てられた出来立ての料理が席へ運ばれてきます。
ステップ5:名物の「そろばん勘定」で締める
飲食を終えたら、席に座ったまま店員に「お会計お願いします」と合図を送ります。すると大将が五玉そろばんを手に席へとやってきます。卓上に積み重なった小皿の色や形状、徳利の本数を素早い手つきで見分け、リズミカルにそろばんの珠を弾いて合計金額を算出します。この職人技とも言えるそろばん勘定の心地よい音を眺めることこそ、大甚本店における最高のエンディングです。