背中に違和感を覚えた際、大半の人は「湿布を貼れば治る筋肉痛」や「慢性腰痛」と考えがちです。しかし、整形外科的な痛みと膵臓疾患による痛みには、明確に異なる鑑別ポイントが存在します。最大の違いは「動作によって痛みが変化するか」という点です。
一般的な筋肉痛や腰椎の異常であれば、上半身をひねる、重い荷物を持ち上げる、立ち上がるなど、特定の動作で激痛が走り、安静にしていれば落ち着くことが大半です。対照的に、膵臓がんと筋肉痛腰痛の見分け方における最大の指標は、「安静時にも痛みが引かない」「姿勢による特徴的な変化がある」という点にあります。
膵臓は後腹膜という背中側の壁に固定されているため、仰向けに寝ると胃などの重みが加わり、神経叢への圧迫が増して痛みが強くなります。そのため、膵臓がん夜間に強くなる背中の痛みに悩まされ、夜中に何度も目を覚ますケースが後を絶ちません。一方で、膝を抱えてエビのように背中を丸めたり、前屈みの姿勢をとったりすると、神経叢への圧迫が一時的に緩み、痛みが少し和らぐ現象(胸膝位・前屈位での疼痛軽減)がみられます。この姿勢変化は、膵疾患を疑う非常に重要な臨床所見です。