「手元にあった裸眼用の清涼系目薬を、ソフトコンタクトを着けたまま差してしまった」という経験を持つ人は少なくありません。しかし、眼科医や製薬メーカーの開発担当者が口を揃えて警鐘を鳴らす通り、裸眼用目薬とコンタクト専用目薬の設計思想には明確な隔たりが存在します。
最大の理由は、一般の目薬に広く配合されている防腐剤「ベンザルコニウム塩化物」の物性にあります。水分を多く含むソフトコンタクトレンズやカラーコンタクトレンズ(高含水・低含水問わず)は、スポンジのように周囲の化学物質を吸着しやすい構造を持っています。ベンザルコニウム塩化物がレンズ素材内部に浸透・濃縮されると、レンズ装用中ずっと高濃度の防腐剤が角膜上皮細胞に密着し続ける状態を作り出し、点状表層角膜症などの角膜障害を引き起こす要因となります。
一方で、ハードコンタクトレンズはプラスチックのような硬質素材で水分を含まないため、薬剤を吸着するリスクはソフトレンズほど高くありません。しかし、酸素透過性ハードレンズの表面コーティングを傷める成分が含まれている場合もあるため、やはり「すべてのコンタクトレンズ対応」と明記された製品を選ぶのが鉄則です。
なお、コンタクト目薬と裸眼の併用について疑問を持つ方も多いですが、現在の「全コンタクトレンズ対応(ソフト・ハード・O2・使い捨て)」を謳う目薬は、裸眼時にも極めて安全に使用できるマイルドな処方が基本となっています。防腐剤フリーまたはレンズに吸着しない特殊な防腐技術を採用しているため、1本をデスクやポーチに常備して裸眼・装用時兼用として運用するのが最も合理的です。