旅行・ご当地グルメのジャンルにおいて、大涌谷の「黒たまご」ほど明快なストーリー性を持つアイコンは他にない。「1個食べれば寿命が7年延びる」という延命地蔵尊の言い伝えは、平安時代の弘法大師の伝説に端を発するとされる。地熱池の約80度の温泉水でじっくり茹でられた玉子は、気孔だらけの殻に鉄分が付着し、硫化水素と反応して硫化鉄となることで真っ黒に変色する。
その後、約100度の蒸気釜で蒸し上げられた黒たまごは、通常のゆで卵に比べてうま味成分が約2割増すという科学的な分析結果もある。現在、現地売店で販売されている黒たまごは専用の塩がセットになったパック販売が主流となっており、出来立ての温かい殻をむいた瞬間に広がる香ばしさは、現地を訪れた者だけが享受できる特権だ。