作品を撮るだけでなく、届ける場所そのものを自らの手で創り出す。その情熱が結実したのが、高知市内に立ち上げたミニシアター「キネマM」だ。シネマコンプレックスによる画一的な上映環境が広がるなか、彼女はあえて手作りの温もりが残る映画館にこだわった。そこは単に映画を消費する空間ではなく、見知らぬ他者と同じ暗闇を共有し、終映後に語り合うための広場である。
劇場の運営は決して平坦な道ではない。だが、支配人として自らロビーに立ち、観客と対話を重ねる安藤桃子の姿は、映画館という文化拠点が地域社会にとってどれほど不可欠なセーフティネットになり得るかを示している。映画の灯を絶やさないための実践的な闘いは、全国のミニシアターカルチャーにも多大な勇気を与え続けている。