テレビの世界から退いた後、彼が全身全霊を捧げてきたのが歌舞伎界での活動である。九代目市川中車の名を背負い、伝統ある歌舞伎座の舞台に立ち続ける日々は、決して平坦な道のりではなかった。40代半ばを過ぎてからの歌舞伎本格参入という異例の経歴ゆえに、基礎の厳しさや伝統の重みとの闘いは今も続いている。
この過酷な挑戦を裏で支えているのが、現在の妻の存在だ。伝統芸能の世界では、役者の妻にも相応の気配りや楽屋での振る舞いが求められる場面が存在する。一般の家庭出身でありながら、彼女は出しゃ張りすぎず、それでいて夫が舞台に集中できるよう細やかなサポートを徹底している。興行を仕切る松竹株式会社の関係者からも、夫を陰で健気に支える彼女の姿勢には温かい視線が注がれている。