中村獅童の家系を語る上で欠かせないのが、屋号「萬屋(よろずや)」の存在だ。父は元歌舞伎役者の初代中村錦壱(本名・小川三喜雄)。そして祖父は、戦前戦後の歌舞伎界を支えた女形の名優・三代目中村時蔵である。
さらに視点を広げると、歌舞伎界のみならず日本の芸能界全体を揺るがすほどの絢爛豪華な親族が顔を揃える。兄弟や親戚筋には歌舞伎の人間国宝や名門の当主がズラリと並び、まさに伝統芸能のサラブレッドと呼ぶにふさわしい血脈だ。しかし獅童自身は幼少期、父が歌舞伎の舞台を離れていたこともあり、いわゆる「御曹司」のレールに乗った順風満帆なスタートを切ったわけではなかった。
自身の力で役を勝ち取り、伝統の枠に収まらない泥臭い修行を重ねてきたからこそ、彼のアクションやセリフには生々しいリアリティが宿る。萬屋の尊い血脈と、叩き上げの反骨精神。このふたつが奇跡的な融合を果たした点に、中村獅童という稀代の役者のルーツがある。