関西と関東におけるすき焼きの最大の相違点は、鍋に牛肉を投入する「第一歩」の作法にある。関東風の作法は実に整然としている。醤油、みりん、酒、砂糖を絶妙な比率で合わせた調味液「割下(わりした)」をあらかじめ鍋に張り、一煮立ちさせたところへ肉や長ねぎ、焼き豆腐、春菊などの具材を同時に投入する。具材全体の旨味が割下の中で溶け合い、煮込み料理のような一体感が生まれるのが特徴だ。
一方で、関西風のアプローチはどこまでもダイレクトで熱量に満ちている。しっかりと熱した重厚な鉄鍋に牛脂を滑らせ、まずは大判の牛肉をダイレクトに焼き上げる。そこにザラメ(大粒の砂糖)をパラパラと振りかけ、醤油を回し入れて肉の脂と香ばしく絡め合わせる。最初に極上の肉そのものを味わい、その後に残った肉汁と脂を利用して野菜を炒め煮にする。野菜から出る水分だけで全体を包み込むため、肉の存在感が際立つ強烈なコクが味わえるのだ。