「愛は花、君はその種子」のルーツを辿ると、1979年のアメリカ映画『The Rose』に行き着きます。主演のベット・ミドラーが歌い、グラミー賞最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞に輝いた名曲『The Rose』(作詞・作曲:アマンダ・マクブルーム)は、傷つきながらも生きる人々の孤独と希望を歌い上げたバラードでした。
『おもひでぽろぽろ』の制作中、作品全体のテーマを象徴する音楽を探し求めていた高畑勲監督は、この『The Rose』のメロディと詩の世界に強いインスピレーションを受けます。1980年代から90年代初頭のスタジオジブリは、久石譲によるシンフォニックな映画音楽が主流でしたが、高畑監督はあらかじめ存在する世界の名曲を独自の解釈で劇中に組み込む手法を強く志向していました。
単なる外国曲の輸入ではなく、日本人が直感的に心震わせる物語の結実として、高畑監督自らペンを執って日本語の歌詞を書き下ろすという異例の挑戦がスタートしました。