本作の楽曲解説において外せない要素が、空間を震わせる特異な音響演出です。サビに向けて押し寄せる巨大な波のようなベースラインと、海中深くから響いてくるような「鯨の鳴き声」を彷彿とさせるサウンドエフェクトは、聴き手を一瞬で深海へと引きずり込みます。
この演出は、クジラのソング(求愛や交信のための歌声)をモチーフにしたとされ、言葉を持たない海洋生物たちが広大な海で交わすコミュニケーションを象徴しています。「言葉にならない想い」を音そのもので具現化する手法は、米津玄師の卓越した音響構築力の真骨頂といえます。
さらに、何重にもレイヤーされたボーカルのデジタルプロセッシングは、まるで水中で反響する声のような浮遊感を生み出しており、オーケストレーションのダイナミズムと相まって、映画館やハイレゾ音源での試聴において鳥肌が立つほどの没入感をもたらします。