インターネット上の掲示板やSNSでは、大動脈の病気に関して誤った認識や楽観論が散見されます。命を落とさないために、以下の代表的な誤解を正しく認識しておく必要があります。
誤解1:「胸が痛くならなければ、動脈瘤が破裂することはない」
これは最も危険な思い込みです。大動脈瘤は風船のように薄く引き伸ばされながら限界まで膨らむため、破裂の直前まで一切の痛みを伴わないケースが大半です。「自覚症状がない=病状が軽い」わけではありません。サイズが破裂基準に達している場合は、自覚症状の有無にかかわらず外科的介入が必要です。
誤解2:「ステントグラフト治療は誰でも切らずに治せる魔法の治療である」
低侵襲で魅力的なステントグラフトですが、すべての患者に適応できるわけではありません。血管の蛇行が激しい場合、動脈硬化が極度に進行して血管壁がもろい場合、あるいはステントを固定するための健全な血管部分(ランディングゾーン)が確保できない場合は、人工血管置換術の方が長期的な生存率や再手術回避の観点で圧倒的に優れています。形状に合わない無理なステント留置は、血液の漏れ(エンドリーク)や血管損傷の原因となります。
誤解3:「一度手術を受ければ、その後の通院や血圧管理は不要になる」
人工血管やステントグラフトで病変部を治療しても、動脈硬化そのものが治癒したわけではありません。残された他の大動脈(上行大動脈や腹部大動脈)に新たな瘤や解離が発生するリスクは残ります。術後も収縮期血圧120〜130mmHg未満を維持する厳格な降圧治療と、年に1〜2回の定期的なCTフォローアップが不可欠です。