街中を原付や中型バイクで走行していた少年が、突如見知らぬ集団に取り囲まれ、ヘルメットを強奪された上に暴行を受ける――。こうした痛ましいコルク半事件の経緯を辿ると、被害者の多くが「普通の高校生」や「バイクに乗り始めたばかりの若者」である事実に突き当たります。警察庁が発表する少年非行白書や各地の警察本部による摘発発表資料を見ても、コルク半を狙った強盗・恐喝事件は後を絶ちません。
一体なぜ若者の間で狙われる事件が起きるのか。その決定的な理由は、不良グループや旧車會コミュニティの間に根強く残る「コルク半を被る資格」という不条理な暗黙の了解にあります。加害者となった少年たちの取り調べや供述調書には、驚くほど共通した言葉が並びます。
「族でもないガキが生意気にコルク半を被っていたからシメた」
「自分たちのナワバリでコルク半を被って走ることは、喧嘩を売っているのと同じだ」
社会学的な見地からこの現象を解剖すると、暴走族文化における「制服」や「特攻服」と同様の機能がコルク半に付与されていることが分かります。コルク半、とりわけ富士日章カスタムと呼ばれる旭日旗や富士山をあしらった派手な塗装が施されたヘルメットは、不良集団における階級秩序と所属意識を示すシンボルでした。自らのアイデンティティであり特権であるはずのアイテムを、何の関係もない一般の若者がファッション感覚で身につけている光景が、彼らの歪んだ承認欲求と集団的自尊心を強く刺激し、暴力的な排除行動へと直結するのです。
さらに見逃せないのが経済的な動機です。かつて一世を風靡した希少メーカーのコルク半や、職人による精巧なカスタムペイント品は、中古市場で数万円から時には10万円以上の高値で売買されます。少年たちにとって、コルク狩りは自らのメンツを保つ威嚇行為であると同時に、手っ取り早く高額な遊興費を手に入れるための「実利的な強盗」へと変質している側面があります。