不思議の国のアリス帽子屋の狂気と値札の謎|水銀中毒の真相を徹底解剖

不思議の国のアリス帽子屋の狂気と値札の謎|水銀中毒の真相を徹底解剖

不思議の国のアリス帽子屋の狂気と値札の謎|水銀中毒の真相を徹底解剖の概要と注目ポイントを徹底的にカバーしました。

ジョン・テニエルが描いた原作挿絵やディズニーのアニメーションでも象徴的に描かれる、シルクハットの脇に挟まれた「In this style 10/6」という紙片。ファンの間でも「暗号なのか」「サイズ表記なのか」と長年議論を呼んできましたが、この数字の正体は疑いようもなく「10シリング6ペンス」という商品の値札です。

1971年に十進法化される以前のイギリス旧通貨制度では、1ポンドは20シリング、1シリングは12ペンス(1ポンド=240ペンス)で換算されていました。「10/6」とは10シリング6ペンスを表し、当時の単位で言えば「半ギニー(10シリング6ペンス=0.525ポンド)」という極めて切りの良い金額に相当します。

19世紀半ばの物価史料に照らし合わせると、10シリング6ペンスという価格は、当時の熟練労働者が数日かけて稼ぐ日当に匹敵し、中流階級の紳士が購入する標準的な高級フェルト帽・シルクハットの定価そのものでした。つまり「In this style 10/6」とは、「この型の帽子を10シリング6ペンスでお仕立てします」という見本用の宣伝文句だったのです。

では、なぜ帽子屋は売り物である値札付きの帽子を自ら被り続けているのか。そのヒントは作中の裁判シーンに明確に残されています。ハートの女王の法廷に証人として引っ張り出された帽子屋は、王様から「帽子を取れ」と命じられた際、こう言い放ちます。

「これは私のものではありません。私はこれを売るために持っているのです。自分の帽子など一つも持っていません。私は帽子屋ですから」

自分自身の所有物は一切持たず、売り物のサンプルを頭に乗せたまま狂気のお茶会を彷徨う。この設定には、産業革命の波に呑まれ、商品そのものに同一化して自我を失ってしまった職人のアイロニーが強烈に刻まれています。

佐藤 大輔
著者

佐藤 大輔

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。