『ドント・ノー・ホワイ』を語る上で欠かせないのが、アメリカの気鋭シンガーソングライターであるジェシー・ハリス(Jesse Harris)の存在です。この楽曲はもともとノラ自身が書き下ろしたものではなく、親しい音楽仲間であったジェシー・ハリスが1999年に自身のアルバムのために制作したナンバーでした。
当時、ニューヨークの小さなクラブで活動していたノラ・ジョーンズは、ジェシーの作るメロディと詩情に深く共鳴し、デモ音源のレコーディングに参加します。名門ジャズレーベル「ブルーノート」のオーディション用として録音されたこのテイクは、派手な装飾を一切排除したシンプルな編成でした。しかし、ノラが吹き込んだブルージーで親密なボーカルは、レーベル首脳陣に鮮烈な衝撃を与え、契約の決定打となったのです。
ジェシー・ハリスによる洗練されたコード進行とアコースティックな温もり、そしてノラ・ジョーンズの唯一無二の歌声が巡り合った瞬間こそが、この奇跡的な名曲を生み出した原点でした。