なぜ天武天皇は、長年続いていた「氏姓制度(しせいせいど)」を刷新しなければならなかったのでしょうか。その理由は、当時の豪族勢力が持っていた既得権益の完全な無力化にありました。
従来の氏姓制度では、豪族たちの祖先の出自や血筋によって「臣(オミ)」や「連(ムラジ)」といった姓が固定化されていました。豪族たちは自らの血統を誇り、「自分たちこそが大王家を支えている」という強い自負を持っていたため、天皇の権力が絶対的なものになり得なかったのです。
そこで天武天皇は、「姓(かばね)は血統ではなく、天皇への忠誠度と功績によって天皇自身が授けるもの」という新ルールへと作り変えました。旧来のトップ層であった臣や連を6位・7位へと大幅に降格させ、天皇の直系親族である「真人」を頂点に据えることで、天皇を唯一絶対の頂点とする権力ピラミッドを完成させたのです。