鬼殺隊士が鬼と渡り合うための絶対前提となる技術が「全集中・常中」です。作中で炭治郎が那田蜘蛛山での激闘後、蝶屋敷の機能回復訓練において瓢箪(ひょうたん)を破裂させる特訓を通じて体得したプロセスは、本作屈指の身体論的見どころとなっています。
全集中とは、大量の空気を取り込んで肺を大きく広げ、血液中の酸素濃度を一気に上昇させる技術です。これにより、瞬間的に心拍数を跳ね上げ、人間離れした筋力、敏捷性、動体視力、そして治癒能力を引き出します。しかし、通常の隊士は攻撃の一瞬しか全集中を維持できません。これに対し、柱をはじめとする一流の剣士は、睡眠中や移動中を含めた24時間36秒、絶え間なく全集中の状態を維持し続ける「常中」を完遂しています。
医学的・生理学的な観点から分析すると、これは自律神経の極限コントロールに他なりません。過呼吸や心臓麻痺のリスクと紙一重の緊張状態を、平時の平常心(恒常性)として肉体に馴染ませる狂気的な鍛錬です。呼吸とは単なる「剣技の名称」ではなく、肉体の限界を強引に突破するための内臓運動プログラムそのものなのです。