食品添加物の実態を告発したベストセラー著者・安部司氏の言論活動を契機に、世間の添加物に対する視線は一気に厳しさを増した。その潮流に乗る形で広まったのが、大手製パンメーカーやスーパーマーケットによる「イーストフード・乳化剤不使用」というパッケージ表示である。一見すると消費者の健康志向に寄り添った誠実な取り組みに見えるが、その裏側には複雑な事情が絡み合っている。
消費者庁が進めた食品表示ガイドライン改定プロジェクトでは、こうした「不使用表示」が逆に「使用している他社製品や従来品は危険である」という誤解を消費者に与える懸念(いわゆる風評被害や誤認を招く表示)が議論の対象となった。実際、イーストフードを使わない代わりに「酵素」や「小麦抽出物」といった代替原料(表示義務の緩い加工助剤など)へ置き換えているケースもあり、単に「不使用」と書かれているからといって添加物が完全ゼロであることを意味するわけではない。不使用表示の流行は、マーケティング上の戦略という側面を色濃く持っているのだ。