ネットの掲示板や知恵袋などで散見される最大の誤解が、「初乗り運賃(IC運賃150円前後)さえ払えば、中でどれだけ電車に乗っていても構わないのではないか」という身勝手な解釈です。しかし、日本の鉄道輸送は利用客と鉄道会社との間の「旅客運送契約」に基づいて運行されており、その契約条項である『旅客営業規則』において運賃の支払義務が明確に定められています。
JR東日本の旅客営業規則第20条に基づき、乗客は「実際に乗車する区間に対する正当な運賃」を支払わなければなりません。乗車券を持たずに、あるいは初乗り運賃相当の支払いで一周全線(34.5km)を実質的に乗車利用し、元の駅で何食わぬ顔をして降りようとする行為は、規則上のキセル乗車(不正乗車)に該当します。
悪質な無賃乗車や運賃逃れに対しては、旅客営業規則第264条に基づき、乗車した全区間の正規運賃に加え、その2倍に相当する増運賃(合計3倍の追徴)が科される規約となっています。2026年現在の電車特定区間運賃において、山手線一周(31〜35km区間)の普通運賃は570円程度(IC運賃)に設定されています。これに増運賃が加算されると、1回の身勝手な試みに対して約1,700円強のペナルティ支払いが命じられる計算になります。
さらに悪質なケースや駅員の指示に従わず逃亡を図った場合、鉄道営業法第29条違反(無札乗車・運賃詐欺)として警察へ身柄が引き渡され、刑事罰(科料または罰金)の対象となる法的リスクすら伴います。「数百円浮かせたい」「ちょっと一周してみたかった」という軽い好奇心が、法的な前科や社会的信用の失墜へと直結する危険性を認識しなければなりません。