海上で撮影されたドロドロの標本写真があまりにも有名なため、多くの人が「海の中でもあの姿で泳いでいる」と錯覚しています。しかし、遠隔操作無人探査機(ROV)のカメラが深海で捉えた本来の姿は、驚くほど端正で滑らかなオタマジャクシ型のシルエットを持っています。
均等な高水圧に包まれた海中において、ゼラチン質の体組織は理想的な流線型を保ちます。皮膚には適度な張りがあり、頭部は滑らかで、まるでオオカミウオやカジカの仲間らしい精悍で落ち着いた魚の顔立ちをしています。海底付近をかすめるようにホバリングし、目の前を通りかかる深海性の甲殻類や軟体動物、有機物の残骸などを、エネルギーを最小限に抑えながら捕食して生きているのです。
つまり、私たちがネット上で目にして面白がっている姿は、潜水病による急激な組織破壊と重力崩壊が引き起こした「遺体の損傷状態」に他なりません。生物学関係者や海洋写真家が「彼らを嘲笑するのは、車に轢かれて潰れたカエルを見て笑うようなものだ」と警鐘を鳴らす理由はここにあります。