室内に現れた多足類を見た瞬間、最も気になるのは「毒はあるのか」「刺されたり噛まれたりする危険はあるのか」という点でしょう。結論から言えば、日本国内の住宅周辺に現れるムカデに似た代表的な虫のうち、人間に激痛を伴う咬傷被害をもたらすのは本物の「ムカデ類」のみです。その他の虫は、毒針で刺したり鋭い牙で肉を切り裂いて毒を注入したりすることはありません。
日本国内の住宅地で頻繁に目撃される多足類・微小昆虫は、危険度と毒性の観点から以下の4つに大別されます。
1. ムカデ(トビズムカデ・アオズムカデ等):危険度【極大】
体長は8〜15cm(大型個体では20cm近く)に達し、頭部に発達した鋭い「顎肢(がくし・毒牙)」を持っています。攻撃性が極めて高く、触れたものに対して瞬時に噛みつきます。注入される毒にはセロトニン、ヒスタミン、ポリペプチドなどが含まれており、焼けるような激痛、激しい腫れ、時にはアナフィラキシーショックを引き起こすため厳重な警戒が必要です。
2. ヤスデ(ヤケヤスデ・オビヤスデ等):危険度【中(噛まないが刺激液に注意)】
体長は1〜3cm程度とムカデより小柄なものが主流です。ムカデと違って攻撃性はゼロで、人間を噛むことは一切ありません。ただし、身の危険を感じると体側にある臭腺から「シアン化水素」や「ベンゾキノン」を含む特異な刺激臭の体液を分泌します。これに素手で触れると皮膚炎を起こしたり、目に入ると激痛や角膜炎を招いたりするため、素手での接触は厳禁です。
3. ゲジ・オオゲジ(通称:ゲジゲジ):危険度【低(見た目は凶悪だが無害な益虫)】
長く細い多数の足と長い触角を持ち、クモのようなシルエットで高速移動します。微量の毒を持っていますが、極めて臆病で人間を咬むことは滅多にありません。万が一噛まれても蚊に刺された程度で軽微です。むしろ住宅内のゴキブリやダニを捕食してくれる「衛生上の益虫」ですが、その奇怪な外見から不快害虫の代表格として忌み嫌われています。
4. ジムカデ・イシムカデ:危険度【低〜中】
土壌や植木鉢の周辺に潜む小型のムカデ仲間です。ジムカデは線のように細長く足が無数にあり、イシムカデは体長1〜2cm前後で赤褐色をしています。毒牙は持っているものの微弱であり、人間に対して能動的に危害を加えるケースは稀です。