スーパーの鮮魚コーナーや外食店舗で頻繁に見かける「生食用牡蠣」と「加熱用牡蠣」。この表示について、「生食用は加熱用より鮮度が新しい」と誤解している消費者は後を絶ちません。しかし、この区分は鮮度の優劣ではなく、育った海域の衛生水準と処理工程の違いによるものです。
「生食用」として出荷される牡蠣は、各自治体および食品衛生法に基づく規格基準をクリアした「指定海域」で採取されたものに限られます。さらに水揚げ後、紫外線殺菌水や人工海水掛け流しの専用プールに24〜48時間以上浸漬され、体内に蓄積した細菌やウイルスを徹底的に吐き出させる「浄化処理」が施されています。対して「加熱用」は、プランクトンが豊富で栄養価の高い沿岸・河口近くの海域で育ったものが多く、旨味成分は濃いものの、陸地からの生活排水由来のウイルスを取り込んでいる可能性が排除できません。
厚生労働省の衛生ガイドラインでも明示されている通り、加熱用牡蠣には「中心部が85℃〜90℃以上で90秒間以上加熱すること」が義務づけられています。鍋物やフライで中心が半生の状態で食べてしまうと、ノロウイルス食中毒を引き起こす危険性が極めて高くなります。
「では、生食用を選べば100%あたらないのか?」と問われれば、答えは「否」です。紫外線浄化工程によってウイルス量は感染閾値以下まで大幅に低減されますが、完全なる「無菌化」を保証するものではありません。ノロウイルスはわずか10〜100個程度の微量粒子が体内に入るだけで発病する極めて強い感染力を誇ります。食べる人の胃酸分泌能力の低下、疲労やストレスによる腸管免疫の低下、持病などの条件が重なれば、厳格に管理された生食用牡蠣であっても発症に至るケースは現実に発生しています。