結論から述べると、生まれつきピンク色の被毛を持つ猫種は地球上に1匹も実在しません。猫の毛色を決定づける遺伝子の仕組みは、現代の獣医学・遺伝学において詳細に解明されています。
猫の被毛に含まれる色素は、黒色から褐色を作る「ユーメラニン」と、赤褐色から黄色を作る「フェオメラニン」の2種類しか存在しません。これらが遺伝子の組み合わせや濃淡によって、黒、白、茶(赤)、キジトラ、サビ、グレー(薄墨色)といった多彩なバリエーションを生み出します。赤色(レッド・茶トラ)の遺伝子が極端に薄まった場合でもクリーム色やアプリコット色になるのが限界であり、波長としての純粋なピンク色を生成するメラニン色素は構造上存在しないのです。
では、なぜ「ピンクの猫を見た」という目撃情報が後を絶たないのでしょうか。その背景には、皮膚の透過による視覚的錯覚と、外的な着色という2つの明確な要因が存在します。
獣医専門誌や『ねこのきもちweb Magazine』の取材データによると、白猫や被毛が非常に薄い猫の場合、毛の隙間から毛細血管が透けて見えることで、耳の内側、鼻、肉球、さらには全身の地肌が淡いピンク色に見える現象が確認されています。元保護猫などの成育記録でも、栄養状態や換毛期の毛密度の変化によって「ピンク色に見える瞬間がある」と飼い主から報告されるケースがありますが、これは被毛そのものが着色されているわけではありません。