賃貸契約における原状回復の基本ルールを定めているのが、国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」である。このガイドラインでは、時間の経過による建物の自然な劣化(経年劣化)や、通常の生活で生じる傷・汚れ(通常損耗)の修繕費用は、すでに毎月の家賃に含まれていると定義されている。つまり、入居者が退去時に負担すべきなのは、故意や不注意、あるいは著しい手入れ不足によって生じさせた損傷(過失損耗)のみだ。
それにもかかわらず、高額請求が発生する最大のカラクリは「経年劣化の考慮不足」と「施工単位のオーバー」にある。例えば、壁紙(クロス)の耐用年数は法律上6年と定められており、6年居住すれば残存価値は1円となる。しかし現場の見積もりでは、一部の傷に対して壁一面や部屋全体の張り替え費用を、経過年数を無視して全額請求してくる事例が散見される。こうした仕組みを知らない入居者が言われるがまま承諾書にサインしてしまうことが、高額精算の要因となっている。