一般に「ダニに刺された」と一括りにされがちですが、加害するダニの生態系によって症状と健康リスクは全く異なります。日常の住環境で刺傷被害の約8割を占めるのがツメダニです。ツメダニ刺され症状と経緯を辿ると、彼らは人間を吸血するのではなく、畳や絨毯に増殖したチリダニやチャタテムシを捕食する過程で、誤って人間の皮膚を刺し唾液腺物質(消化液)を注入します。この唾液成分がアレルゲンとなり、体内のマスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンが大量放出され、刺された翌日以降に猛烈な痒みと硬結を生じさせます。
一方、イエダニ噛まれた跡は、天井裏や壁内に営巣するクマネズミやドバトに寄生するイエダニが宿主を失い、吸血対象を求めて室内に侵入した際に発生します。イエダニは純粋な吸血性害虫であるため、吸血時の刺激と唾液毒によって刺された直後から激しい痒みと痛みを伴い、ツメダニ以上に鮮紅色の硬い発疹を広範囲に残します。
そして最も警戒しなければならないのが野外性のマダニです。山林や河川敷、家庭菜園の草むらに生息するマダニは、皮膚に口器を深く刺し込み、セメント様物質を分泌して数日から10日以上吸着し続けます。吸血初期は無痛性であることが多く、「ホクロのような黒いイボが急にできた」と気づくケースが大半です。マダニは日本紅斑熱やライム病、致死率が10〜30%に達する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を媒介するため、屋内ダニとは次元の異なる医学的警戒が求められます。