混色をめぐっては、教育現場やインターネット上の解説でも誤解されがちな盲点がいくつか存在します。その代表例が「赤と緑と青(光の三原色)を絵の具で混ぜるとどうなるか」という疑問です。
光の世界であれば、赤と緑と青を混ぜると純白の光になります。しかし、これを絵の具で行うと、極限まで波長が吸収され、限りなく黒に近いダークグレーや泥炭色になります。絵の具の三原色(CMY)ではなくRGBの3色を絵の具で混ぜ合わせた場合、各顔料の波長吸収帯が重なり合い、ほぼすべての可視光を遮断してしまうためです。
また、「補色同士を混ぜると完全な無彩色(綺麗なニュートラルグレー)になる」という言説も、絵の具の実務においては半分間違いです。市販の絵の具顔料は完全な単一波長のみを反射するわけではないため、チューブごとの微妙な化学組成の違いによって、赤緑の混色は必ず「赤茶色寄り」か「緑がかったオリーブ色」のどちらかに傾きます。完全な無彩色を作りたい場合は、混色後の色味の偏りを観察しながら、補正色(青や黄色)をスポイト単位の微量で追加調整する必要があります。