地下礼拝堂の崩壊時、ロッド・レイスが放った超高熱と落盤により、ケニー率いる対人立体機動部隊は壊滅。ケニー自身も全身に致命的な火傷と重傷を負い、一本の木の下で息絶えようとしていました。
その手には、ロッドの鞄からくすねた「巨人化の薬(注射器)」が握られていました。自分に注射すれば、無垢の巨人となって生き延びることができ、周囲の人間を捕食して知性巨人の力を継承できる可能性がわずかに残されていました。
しかし、ケニーは自らに注射を打ちませんでした。駆けつけたリヴァイに対し、ケニーは自嘲気味にこう語ります。
「注射を打てば生き延びられるかもしれねぇ……だが、まともに動ける巨人になれる保証はねぇし、何より……」
ケニーが薬を使わなかった最大の理由は、「ただ生き汚く生き延びることへの拒絶」でした。巨人の力を得てウーリと同じ景色を見たかったケニーですが、死に瀕して悟ったのは、自分はどこまで行っても「力への渇望に酔っ払った一人の人間に過ぎない」という冷厳な事実でした。ここで無様に化物となって生き延びることは、自らの誇りとウーリへの憧憬を汚すことに他ならなかったのです。
リヴァイから「あんたは……俺の何なんだ?」と問われたケニーは、最期の瞬間に告白します。
「……バカが。ただの……伯父さんだ」
血縁関係を明かすとともに、巨人化の注射器をリヴァイの手に押し渡したケニー。それは、父親になりきれず突き放した甥に対する、不器用極まりない「最期の遺産相続」であり、唯一の家族愛の表れでした。