立ち食いそばファンやグルメ情報サイトで時折見かけるのが、「駅ナカのチェーン系はどこで食べても同じ味で風情がない」という言説です。しかし、川崎の現状を詳細に分析すると、その認識は大きな誤解であることがわかります。
第一に、JR東日本グループが展開するいろり庵きらくは、近年めざましい進化を遂げています。茹で太郎に代表される「店内製麺・生そば茹でたて」の流れを受け、駅構内店舗でありながら茹で置きを極力廃止。かき揚げも工場直送のチルドではなく、店内で衣をつけて揚げるオペレーションを採用しており、サクサク感と玉ねぎの甘みは専門店顔負けの仕上がりです。
第二に、京急電鉄沿線を中心に展開するえきめんやは、地域密着型チェーンとしての独自性を貫いています。三浦半島の「城ヶ島大根」や地元水揚げの魚介類とコラボレーションした限定メニューを頻繁に投入し、私鉄沿線文化を丼の中で表現しています。「どこも同じ」どころか、駅の改札内外で全く異なる出汁と麺の哲学がぶつかり合っているのが川崎のリアルです。
また、「川崎のそば=労働者の街だから真っ黒で塩辛いだけ」というイメージも過去の遺物と言えます。現代の名店はいずれも、鰹節や宗田節、鯖節を絶妙な比率で配合し、醤油のキレとともにしっかりとした出汁の旨味を感じさせる重層的なスープへと進化を遂げています。