犬の目の中でレンズの役割を果たす「水晶体」は、通常は高い透明度を保っています。しかし、加齢や遺伝、代謝異常などによって水晶体を構成するタンパク質が変性すると、白く混濁して光を通さなくなります。これが犬の白内障進行ステージと見え方の基本的なメカニズムです。病気の進行は大きく4つの段階に分かれており、それぞれ見え方が劇的に異なります。
初期にあたる「初発期」では、水晶体の濁りは全体の15%未満にとどまります。この段階における愛犬の見え方は、視界の端にうっすらと薄いレースカーテンがかかった程度であり、日常生活において視覚障害を自覚することはほとんどありません。しかし、注意深い観察を行うと、薄暗い部屋で段差を少し警戒したり、投げられたボールへの反応が一瞬遅れたりする犬の白内障初期症状が現れ始めます。
濁りが水晶体の15%から100%未満へと広がる「未熟期」に入ると、視界は急激に悪化します。人間でいう「目の前に濃いすりガラスを置かれた状態」になり、物の輪郭や飼い主の表情は判別できなくなります。光が乱反射(グレア現象)を起こすため、強い日差しや対向車のヘッドライトを異常に眩しがる素振りを見せるのもこの時期の特徴です。
水晶体全体が完全に白濁する「成熟期」に達すると、視力は完全に失われ、愛犬の見え方は「明暗の識別(昼か夜か)」のみとなります。さらに放置されて水晶体の融解が始まる「過熟期」では、目の中で激しい炎症反応が引き起こされ、視覚喪失だけでなく強い痛みを伴う深刻な段階へと進行します。