多くの患者がつまずく最大の原因は、「身体障害者手帳」と「障害年金」という全く異なる2つの公的制度を混同している点にあります。
ネット上のQ&Aサイトなどで「人工関節の手術をしたらすぐにお金がもらえた」という投稿を見かけることがありますが、これは身体障害者手帳の恩恵ではなく、障害厚生年金(3級)の給付を指しているケースがほとんどです。
障害年金の制度設計においては、人工関節置換術を施行したこと自体が「労働や日常生活への一定の制限」として評価されるため、術後の可動域にかかわらず原則として3級の受給権が発生します。ただし、ここには極めて重要な「初診日要件」という壁が存在します。
股関節の痛みで初めて医療機関を受診した日(初診日)に、会社の健康保険などの厚生年金に加入していた方は障害厚生年金3級を受給できます。しかし、初診日に自営業や専業主婦、学生などで国民年金(第1号・第3号被保険者)に加入していた場合、受給できるのは「障害基礎年金」のみとなります。障害基礎年金には3級の設定がなく、1級または2級の極めて重い障害状態でなければ支給されないため、人工股関節の手術のみでは年金が支給されません。
また、身体障害者手帳の交付を目指す場合、都道府県知事から指定を受けた「身体障害者福祉法第15条指定医」による診断書が必須となります。指定医以外の医師が作成した診断書では申請が受理されない上、診断書の作成費用は医療機関ごとに自費設定(約5,000円〜15,000円程度)されているため、明らかに基準を満たさない状態で無理に作成を依頼すると、費用倒れになるリスクがあります。