体格が満たない子どもが大人用シートベルトを着用した場合、衝突事故時にどのような挙動が起きるのか。JAFや自動車アセスメント(NASVA)の衝突実験データから、主に2つの致命的なリスクが立証されています。
1点目は「首への強い圧迫と頚動脈・頚椎の損傷」です。座高が足りないため、本来は鎖骨と胸骨を通るべき肩ベルトが子どもの首元にかかります。衝突の強い衝撃でベルトが首に食い込み、気道閉塞や頚椎骨折、重度の皮膚裂傷を引き起こすケースが報告されています。
2点目が最も危険視される「サブマリン現象(潜水艦現象)」です。子どもは骨盤(腸骨稜)の発達が未熟なため、腰ベルトを強固な骨で受け止められず、柔らかい腹部にベルトが深く沈み込みます。さらに衝突時の強い慣性力によって腰ベルトの下を身体がすり抜け、座席前方へ滑り落ちてしまいます。
この現象が発生すると、腰ベルトが胃・肝臓・腸などの軟部組織を激しく圧迫し、内臓破裂や大動脈損傷による腹腔内大出血を引き起こします。見た目にはシートベルトを締めていたにもかかわらず、シートベルト自体が凶器となって致命傷を与える構造的リスクが存在します。