今日のラーメン業界において、汁なしの味付き替え玉である「和え玉」は一つのスタンダードな様式美として定着しました。その和え玉の元祖こそがイチカワです。単なる麺のおかわり(替え玉)ではなく、少量のカエシ、煮干し油などの特製香味油、角切りチャーシュー、刻みタマネギ、魚粉を細ストレート麺に絡め、それ単体で完成された油そばとして提供するという発明は、ラーメンの食体験を根本から変革しました。
元祖和え玉の真骨頂は、3段階で変化する味のグラデーションにあります。まずは底のタレと麺を豪快にかき混ぜてそのまま啜り、小麦の芳醇な風味と煮干し油のビターなコクを堪能する。次に、ラーメンの残った濃厚スープにつけ麺のようにくぐらせて温度と粘度のコントラストを楽しむ。そして最後に、残ったスープへダイブさせて完結させる。この緻密に計算された味覚の構築美は、模倣店がどれほど増えようとも決して色褪せない原点の凄みを放っています。
また、同店を語る上で外せないのが濃厚煮干し セメント系ラーメンの祖としての存在感です。大量の煮干しを頭から内臓まで砕き込み、丁寧に灰汁を抜きながら抽出された灰褐色のスープは、見た目の武骨さとは裏腹に、エグみや苦味が旨味の輪郭として完璧に昇華されています。動物系白湯との絶妙なブレンドが生む濃密なテクスチャーと、加水率の低いパツパツとした極細麺との親和性は、まさに一代の芸術品と呼ぶにふさわしい仕上がりです。