なぜこれほど多くの人が「生まれてきた意味がわからない」と苦悩するのでしょうか。臨床心理学の現場で指摘される最大の要因は、現代社会特有の条件付き自己肯定感と存在意義の混同です。
幼少期から「テストで良い点を取ること」「周囲の期待に応えること」「役に立つ人間になること」を条件として承認されてきた人は、無意識のうちに「他者から評価される成果を出さなければ、生きている価値がない」という強迫観念を内面化します。その結果、仕事での挫折、キャリアの停滞、あるいは加齢や病気によって「生産的な役割」を果たせなくなった途端、自分の存在意義が根底から揺らぎ、深い生きづらさに直面します。
心理学では、存在意義を「DO(何をするか・何ができるか)」に置くか、「BE(ただそこに存在していること)」に置くかで、心の耐久力に決定的な差が生じると分析されています。生まれたばかりの赤ん坊は何の生産性も持ちませんが、ただ存在するだけで周囲を温かく満たします。本来、人間の存在価値は無条件の「BE」に担保されているはずです。しかし、成果至上主義の社会規範に晒され続けるうちにその感覚を見失い、「目に見える大きな意味」を外側に求め続けて疲弊してしまう構造が浮き彫りになっています。