阿部恭子氏が加害者家族の支援に着手した背景には、大学院時代に目の当たりにした「法の枠組みからこぼれ落ちる家族の悲劇」がありました。当時、犯罪被害者支援や刑事法学の現場に身を置いていた彼女は、事件の陰で無関係な親族が過激な私刑に晒され、自殺や家庭崩壊へと追い込まれるケースが日常茶飯事であるという深刻な実態を知ります。
世間からは「家族にも責任がある」「同情する余地はない」と一刀両断されがちですが、家族が社会的制裁によって破滅し、孤立を深めれば、出所した本人の受け皿がなくなり再犯のリスクが飛躍的に高まるという悪循環が生じます。「家族を救うことは、将来の被害者を生まないための防犯対策でもある」という冷徹かつ人道的な視点が、彼女を突き動かす原動力となりました。
誰一人として手を差し伸べてこなかったアンタッチャブルな領域において、「誰かが始めなければ永遠に変わらない」と腹を括った阿部氏は、周囲の猛反対を押し切って支援活動の第一歩を踏み出しました。