引き出しの奥から発掘されたとらやの羊羹を見て、まず誰もが検索するのが「賞味期限切れでも食べられるのか」という疑問です。ネット空間では「1年過ぎていても全く異常なし」「3年熟成させた猛者もいる」といった書き込みが散見されますが、製造元である虎屋はどのような見解を示しているのでしょうか。
大前提として、虎屋が製品に記載しているのは安全に食べられなくなる期限を示す「消費期限」ではなく、美味しく味わうための目安である「賞味期限」です。代表銘柄である竹皮包羊羹(『夜の梅』『おもかげ』『新緑』など)や携帯性に優れた小形羊羹の賞味期限は、いずれも「製造から1年(365日)」と設定されています。
この期限設定に関して、過去の取材記録や同社の広報窓口で語られてきた公式見解の骨子は極めて明快です。
「賞味期限を過ぎてすぐに変質したり、お身体に害を及ぼしたりすることはございませんが、時間の経過とともに小豆本来の風味や色合い、なめらかな舌触りが徐々に失われてまいります。とらやが理想とする最良の美味しさを味わっていただくため、表示された賞味期限内にお召し上がりいただくことをおすすめしております」
食品衛生法およびJAS法における賞味期限は、理化学試験や微生物試験で導き出された「安全限界日数」に、通常0.7〜0.8の安全係数を掛けて短めに設定されます。計算上、1年の賞味期限が設定されている食品は、適切な環境下であれば約1年3ヶ月〜1年5ヶ月程度は衛生的な安全圏内にとどまります。愛好家の間で「1年過ぎても平気」と囁かれる背景には、この安全係数によるマージンと、後述する羊羹特有の物理的防御力が大きく関係しています。