相撲中継の画面越しに豊昇龍を見た観客の多くが息をのむのが、仕切り線の前で見せる冷徹かつ獰猛な眼差しです。ネット上でも一時、「豊昇龍の睨みが怖すぎる」「相手を威嚇しているのではないか」といった声が上がったことがありました。この豊昇龍の土俵での睨みの理由には、彼自身の生理的要因と研ぎ澄まされたメンタリティという、2つの明白な根拠が存在します。
第一の理由は、長年指摘されてきた視力の低さです。入門当時から裸眼視力が弱かった彼は、仕切り線で遠くの相手や行司の軍配を凝視しようとすると、自然と眉間にしわが寄り、目を細める癖がついていました。本人が過去の囲み取材で「視力が悪くて相手がよく見えないから目を細めていただけなのに、みんなに睨みつけていると言われて驚いた」と苦笑交じりに明かしている通り、威嚇ではなく物理的な視覚確保が発端でした。
そして第二の理由は、土俵上におけるペルソナ(勝負師の仮面)の徹底です。豊昇龍は本名をスガラグチャー・ビャンバスレンといい、本質は誰に対してもフランクで大らかな青年です。しかし、一度まわしを締めれば、そこは生き馬の目を抜く大相撲の真剣勝負の場。「相手に気迫で負けたら終わり」というプロフェッショナリズムが、あのアグレッシブな表情を作り出しています。闘志を剥き出しにするプロ意識の高さこそが、初見の観客に「怖い」という強烈なインパクトを残す本質的な理由なのです。