ネット上の質問サイトやSNSで毎年春先から初夏にかけて後を絶たないのが、「洗濯物を干していたら、蜂が衣類にまとわりついて離れない」「ハッカ油を吹きかけたはずなのに蜂が飛んできた」という悲鳴混じりのトラブル報告です。この現象の裏には、人間が「清潔でいい匂い」と感じる芳香成分の恐るべき真実が隠されています。
蜂を引き寄せる最大の誘因物質は、市販の柔軟剤や香水、ヘアスプレーに多用されている「甘いフローラル系」「ベリーなどのフルーティ系」の合成香料です。柔軟剤の成分表にある「エステル系」「アルコール系香料」の分子構造は、過熟した果実や糖度の高い花の蜜が放つフェロモン臭と極めて類似しています。
活動期に入った働き蜂は、エネルギー源となる炭水化物を血眼になって捜索しています。風に乗って柔軟剤の甘やかな香りが漂ってきた瞬間、蜂はそれを「大量の蜜を蓄えた巨大な花の群生」と誤認してベランダへ突進してきます。さらに悲惨なのは、黒や濃紺など黒っぽい洗濯物に柔軟剤の香りが染み付いていた場合です。蜂は天敵である熊の毛皮と同じ「黒色」に対して攻撃性を剥き出しにする本能があるため、「甘い匂いで引き寄せられた上で、黒い衣類を外敵とみなして威嚇・刺傷する」という最悪のコンボが成立してしまいます。
また、「柑橘系の香りは虫除けになる」という思い込みから、オレンジやグレープフルーツの香水・アロマを使うケースも逆効果です。柑橘類に含まれる甘酸っぱい香気成分は蜂の大好物であり、樹液や熟れた果実の匂いとして認識されるため、蜂除けどころか強力なトラップとして機能してしまいます。蜂の嫌いな匂いを利用する際は、柑橘系や甘い花香を徹底して排除し、メントールやユーカリ、シトロネラなどの「青臭く刺激的なハーブ」に限定しなければなりません。