クロロがゾルディック家の当主シルバ、そしてその父ゼノという2人の凄腕暗殺者を相手に立ち回った際、右手から閃いたのがベンズナイフでした。世界最高峰の戦闘力を誇る2人を前に、クロロがあえてこの武器を選択した背景には、冷徹な戦術的計算が存在します。
クロロの念能力「盗賊の極意(スキルハンター)」で他者の能力を奪うには、「相手の能力を見る」「質問に答えさせる」「本に手形を合わせる」など複数の厳しい条件を1時間以内にクリアしなければなりません。ゼノの猛攻とシルバの重い一撃が同時に迫る極限状態において、本を開いて能力を盗む余裕は皆無でした。
そこでクロロが狙ったのが、「掠過(かす)り傷ひとつで相手を無力化する」というカウンター戦術です。間合いに入った瞬間に一撃を掠めさせれば、どれほど強靭な肉体を持つ相手でも行動不能に追い込める。相手に「刃物に触れてはならない」という強烈なプレッシャーを与え、接近戦を牽制する上でもベンズナイフは極めて有効な選択肢でした。