二人の関係性を紐解く上で欠かせないのが、狭霧山に庵を構える元水柱・鱗滝左近次の弟子という「同門の兄弟弟子」の立場です。炭治郎は鱗滝から過酷な修業を受け、水の呼吸の基本である壱ノ型から拾ノ型までを叩き込まれました。
一方の義勇は、その基本技を極限まで洗練させただけでなく、独自の型である水の呼吸・拾壱ノ型「凪」を編み出すほどの天賦の才を見せていました。炭治郎にとって義勇は、自らが修める剣術の最高到達点であり、背中を追い続けるべき絶対的な象徴でした。
しかし、この美しい兄弟弟子の構図の裏には、義勇の背負う凄惨な過去が横たわっていました。かつて義勇は、同じく鱗滝の弟子であり無二の親友であった錆兎(さびと)と共に最終選別を受けています。当時、山にいた鬼のほぼすべてを一人で討伐した錆兎が命を落とし、怪我をして意識を失っていた義勇だけが生き残って選別を通過してしまったのです。さらに義勇の幼少期には、祝言を翌日に控えた実の姉・蔦子(つたこ)が自らを鬼から隠して身代わりとなり殺されるという惨劇も起きていました。
「自分は生き残るべき人間ではなかった」「自分は水柱になっていい人間ではない」。そうした劣等感と罪悪感に囚われ、自らを孤立させていた義勇の閉ざされた心に対し、同じく鱗滝の愛弟子として大岩を斬り、錆兎の魂に導かれて選抜を生き抜いた炭治郎の存在は、運命の巡り合わせ以外の何物でもありませんでした。