肝膿瘍は、本来無菌状態であるはずの肝臓組織内に病原体が侵入・増殖し、局所的な組織破壊とともに膿汁(のうじゅう:膿の塊)が形成された状態を指します。肝臓は血流が非常に豊富な臓器であるため、全身の血管や胆道系を経由して病原菌が運ばれやすいという特徴を持っています。
臨床現場において、肝膿瘍は病原体の種類によって大きく2つに分類されます。
1つ目は、日本国内で発生する肝膿瘍の大部分を占める化膿性肝膿瘍です。大腸菌やクレブシエラ菌(肺炎桿菌)などの細菌感染が原因となり、胆石や胆管炎、あるいは大腸の疾患などから細菌が肝臓へ波及することで発症します。高齢者や糖尿病などの持病を抱える免疫力低下時に発症率が高まる傾向があります。
2つ目は、赤痢アメーバという原虫が原因となるアメーバ性肝膿瘍です。経口感染したアメーバ原虫が大腸粘膜を通過し、門脈と呼ばれる血管を通って肝臓に到達することで巣を作ります。発展途上国への渡航歴がある人や、特定の性的接触を介した感染事例が確認されています。