「難病指定」と聞くと、瞬時に「命に関わる不治の病」「短命に終わるのではないか」という不安に苛まれる患者は少なくありません。実際の寿命や予後はどうなのでしょうか。
結論から言えば、現在の医療水準において強皮症の予後は劇的に改善しています。かつて1970年代から80年代にかけては、急激な高血圧と腎不全を引き起こす「強皮症腎クリーゼ」が死因のトップであり、発症後の5年生存率は60%程度にとどまっていました。しかし、ACE阻害薬の導入により腎クリーゼによる死亡率は激減。2020年代以降の大規模臨床コホートデータによると、全体の10年生存率は80%〜85%超にまで向上しています。
ただし、依然として予後を大きく左右する要因が存在します。それが「間質性肺炎」と「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」という2大肺合併症です。
特に間質性肺炎は、全身性強皮症患者の約50%〜80%に何らかの画像異常所見が認められ、現在の主要な死因となっています。肺胞の壁(間質)に線維化が起こり、酸素の取り込みが困難になるため、階段を上る際の息切れ(労作時呼吸困難)や乾いた咳(空咳)が初期症状として現れます。この肺病変の進行速度と重症度が、患者ごとの長期予後を大きく分かつ決定打となります。
強皮症は、病変の広がり方によって「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」と「限局皮膚硬化型全身性強皮症」に二分され、それぞれ進行パターンやリスクが異なります。その差異を以下の比較表にまとめました。
患者の手記や長期療養者のコミュニティにおいて共通して語られるのは、「初期の数年間が精神的にも肉体的にも最も過酷だった」という事実です。特にびまん型は発症から2〜4年にかけて皮膚硬化のピークを迎えますが、その後は自然経過として皮膚が柔らかくなる「軟化期」に入る特性があります。初期の急性期にいかに内臓病変の進行を抑え込めるかが、その後の生存期間と生活の質(QOL)を左右します。