神棚のしめ縄やお正月の注連飾り、神社の鳥居などで目にするジグザグとした白い紙は「紙垂(しで)」と呼ばれます。その語源は、神前に捧げる布や紙を垂らしたことに由来する「垂(し)づ」という古語にあります。古代の日本では神事の際に木綿(ゆう)や麻の繊維を垂らして神意を招いていましたが、室町時代から江戸時代にかけて製紙技術が普及するにつれ、純白の和紙を用いた現在の形態へと定着しました。
紙垂の独特な稲妻状の形状には、主に2つの象徴的な意味が込められています。1つは、天空から降り注ぐ雷光(稲妻)を表しているという説です。古来、雷は「稲妻」の漢字が示す通り稲の実りを促す神聖なエネルギーと考えられており、邪悪なものを打ち払う強大な力と五穀豊穣の祈願を意味します。もう1つは、神域と現世(俗世)を隔てる「結界」としての役割です。紙垂を下げることで、その内側が清浄に保たれた神の鎮座する場所であることを示します。
神道儀礼においては、神棚やしめ縄だけでなく、神職が身を清めるお祓いの具である「大麻(おおぬさ)」や、参拝者が神前に捧げる「玉串(たまぐし)」にも紙垂が取り付けられます。これらに共通しているのは、「清浄無垢な状態で神様をお迎えする」という一貫した祈りの精神です。本来は厚手で光沢のある「奉書紙(ほうしょがみ)」を用いるのが正式とされますが、現代の家庭祭祀においては、手に入りやすい半紙で心を込めて手作りすることが十分に礼を尽くした作法として認められています。