日本の政治史において、言葉の圧縮がもたらす破壊力を白日の下に晒したのが小泉純一郎元首相だった。「自民党をぶっ壊す」「改革なくして成長なし」「抵抗勢力」。複雑怪奇な政策論争を善悪の二項対立へと大胆に単純化したその手法は、「ワンフレーズポリティクス」として定着した。
それまでの永田町が得意とした曖昧な合意形成や、官僚的な長文答弁は完全に無力化された。自由民主党内の旧来派閥を敵と位置づけ、自らを改革の旗手に仕立て上げる劇場型の演出は、国民の熱狂的な支持を獲得する。政策の緻密な妥当性よりも、直感的な納得感が勝敗を決めるという現実を、政治コミュニケーションの世界に決定的に刻み込んだ転換点だった。