平穏な日常が突如として崩壊したのは2013年1月のことだった。静養先だった熱海の自宅で佳那晃子は突然倒れ、緊急搬送された。診断は重度のくも膜下出血。発見時の容態は極めて深刻で、即座に大手術が行われたものの、術後も意識は戻らず深い昏睡状態が続いた。
グラスゴー・コーマ・スケール(意識障害の深度分類)でも極めて危険な水準にあり、主治医からは「植物状態を覚悟してほしい」「仮に一命を取り留めても、再び言葉を交わすことは医学的に極めて困難」という残酷な宣告が下された。命の灯火がいつ消えてもおかしくない張り詰めた空気の中、病室には冷たいモニター音だけが響いていた。