日本国内におけるカニの最盛期といえば冬場を連想しがちですが、花咲ガニの旬の時期は真夏です。根室沿岸での漁期は例年7月上旬から9月下旬にかけて設定されており、この時期に水揚げされる個体は身入りがピークに達します。一方、釧路沖では3月から7月にかけても水揚げが行われるため、春から晩夏にかけて道東の各港から順次極上品が出回るサイクルとなっています。
そして、花咲ガニを選ぶ上で見逃せないのが「オス」と「メス」の選択です。身肉の詰まりや脚の太さを純粋に楽しむのであればオスの大型個体(800g〜1.2kg超)が一押しですが、食通の間で奪い合いになるのがメスの個体です。
タラバガニ類ではメスの捕獲が厳しく禁じられているケースが多い中、花咲ガニは一定の規制下でメスが流通します。このメスが蓄える花咲ガニの内子と外子の評判と味は、珍味中の珍味として崇められています。
- 外子(そとこ):ふんどし(腹部)の外側に抱えられた粒状の卵。醤油漬けや塩茹でで味わうと、プチプチと弾ける小気味よい食感と広がる磯の香りが酒の肴として最高の相性を見せます。
- 内子(うちこ):甲羅の内側、未受精卵の段階にある卵巣組織。茹で上げると鮮やかなオレンジ色に固まり、ウニの甘みと極上チーズのコクを凝縮したような濃厚極まりない舌触りを誇ります。
オスで豪快な身の弾力を堪能するか、メスを選んで内子の芳醇な旨味に浸るか——これは花咲ガニを注文する際、最も贅沢で頭を悩ませる選択肢と言えます。