滅びの言葉「バルス」によってラピュタの基底部が崩壊するクライマックスにおいて、強烈な光を直撃されたムスカは「目がぁ、目がぁ〜!」と叫びながら視力を失います。その後、彼がどのような最期を迎えたのかについては、ファンの間でも長年語り継がれてきました。
映像をコマ送りで精緻に分析すると、城の崩壊とともに海へと落下していく瓦礫の中に、頭を下にして真っ逆さまに落下していくムスカの極小のシルエットがはっきりと描き込まれています。これは都市伝説ではなく、スタジオジブリ公式の絵コンテ集(徳間書店)にも明確に指示が記されている公式の描写です。
演出上の意図として、宮崎監督は悪役の死を過度に感傷的あるいは派手に描写するのではなく、巨大な自然とテクノロジーの崩壊という大いなるうねりの中に、ちっぽけな人間の亡骸として淡々と処理する手法を取りました。支配欲の権化となった男が、ゴミのように海へと消えていくこの一瞬のカットは、徹底したリアリズムと無常観を象徴する名シーンとなっています。