中袋(内袋)が付属していない香典袋を使用する場合、お札は外袋に直接包む形をとります。この際、最も慎重を期すべきなのが「お札の向き(裏表と上下)」、「裏面の必要事項の書き方」、そして「裏側の折り方」の3点です。
弔事における金封の扱いは、慶事(結婚式など)の作法と正反対になるルールが存在します。手順を一つずつ確認していきましょう。
1. 香典袋のお札の向きと裏表の入れ方
中袋なしの香典袋にお札を入れる際は、「袋の表側(『御霊前』などが印刷されている面)」に対して「お札の裏側」が来るように配置します。さらに、肖像画が下側(底の方)に位置するように揃えて入れます。
これには「悲しみに顔を伏せる」「突然の訃報に顔を伏せて涙を流す」という意味が込められています。複数枚のお札(千円札を5枚など)を包む場合は、すべてのお札の向きを同一方向に揃えることが鉄則です。
2. 金額と住所・氏名の書き方
中袋がある場合は中袋の表面に金額、裏面に住所・氏名を記載しますが、中袋なしの場合はすべて外袋の裏面(左下のスペース)に直接記入します。
- 金額の書き方:裏面左側に縦書きで記載します。改ざん防止の観点から、数字は旧字体の漢数字(大字:だいじ)を用いるのが正式な作法です(例:5,000円なら「金 伍阡円」または「金 伍千円」、3,000円なら「金 参阡円」)。「金〇〇円 也」の「也(なり)」は現代では省略しても問題ありません。
- 住所と氏名の書き方:金額の左隣に、郵便番号、住所、氏名を縦書きで分かりやすく記載します。遺族が後日、香典帳を整理したり香典返しを発送したりする際、この情報が唯一の手がかりとなります。
3. 表書きと使用するペンの選び方(薄墨ペンか黒ペンか)
表書き(「御霊前」「御香典」など)や氏名は、薄墨(うすずみ)の筆ペンで書くのが基本です。薄墨には「突然の訃報に接し、涙で墨が薄れてしまった」「急ぎ駆けつけたため墨を十分に磨れなかった」という哀悼の情を表す意味があります。
ただし、裏面の住所や金額の記入については、薄墨では細かな番地や数字が潰れて遺族側で読み取れなくなる実務上のリスクがあります。そのため、「表側の氏名・表書きは薄墨ペン、裏面の住所・金額は黒のサインペンやボールペン」で明瞭に記すことが、現代の葬祭現場では実用的な配慮として広く推奨されています。
4. 裏側の折り返し方(折り方)
香典袋の裏側の折り返しは、「上側の折り返しを、下側の折り返しの上に被せる」形にします。これは「悲しみに頭を垂れる」「うつむいて涙を流す」「悲しみを下へ流す」という意味を持ちます。下側を上に被せてしまうと慶事(結婚祝い等で福を逃がさない作法)の折り方になり、重大なマナー違反となるため十分な注意が必要です。